半導体業界での高度な自動化を実現するための障壁を取り除く

技術の進展により、従来の工場でも自動化ソリューションを導入しやすくなりつつある
Barriers for legacy fabs
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Applied Materials Automation Products Groupは、世界中の顧客に自動化ソフトウェアソリューションをご提供しています。これらのソリューションを導入した経験から、手作業が多い150mm/200mmの従来型フロントエンドファブと、完全自動化された「ライトアウト」運用を行う新しい300mmファブとの間には、自動化の成熟度に大きな差があることがわかりました。これは主に、従来型製造業者がこれまでより高度な自動化を実現する際に直面してきた大きな障壁によるものです。この記事では、時代の変化と、業界が現在これらの障壁にどのように対応しているかを見ていきます。

自動化の需要を促している要因は何か?

より高性能なチップを必要とする新しいテクノロジーへの需要は年々高まっています。その結果、半導体メーカーは生産量の増加に直面すると同時に、より複雑な製造プロセスを導入するようになりました。このような高性能チップを生産するために必要な追加工程と労力は、特に手作業の多い従来型工場では、直接労働生産性に大きな負担を課しています。製造業者は、需要増と製造プロセスの複雑化に対応するには自動化が不可欠であり、単に労働力を増やすだけではコストがかかりすぎることを理解しています。

従来型ファブにおける障壁

自動化の導入を目指す従来型工場にとって、大きな障壁となる領域は主な3つあります。1つ目は所有コストです。従来型メーカーは業界の大手に比べて予算が限られた小規模な場合が多く、大規模なインフラ変更には多額の費用がかかります。多くの施設は300mm製造が始まる前の1980~90年代前半に建設されたため、オーバーヘッド搬送システムを備えていません。このような施設は、天井が低く、機器の間隔も狭いため、自動化された資材搬送を導入するのが難しく、不利な状況にあります。対照的に、300 mmセグメントの施設は、大型のフロントオープニングユニファイドポッド(FOUP)で運ぶ大型300mmキャリアに対応するため、最初から自動化された資材搬送システムを備えて建設されました。そのため、より高度な自動化を導入する上で有利な立場にあります。

建設当初から自動化搬送システムを備えていない従来型工場を改修するには、多額の費用がかかります。既存施設を再構成するには、高価な処理機械の移動、大規模な建設工事、既存スタッフの再教育が必要であり、これらすべてを、進行中の生産を中断することなく行わねばなりません。また、半導体製造でソフトウェアを稼働させるために必要な高性能サーバーの初期費用も、費用面で大きな障壁となります。

従来型工場が高度な自動化を実現できないもう一つの理由は、こうした堅牢なシステムを維持できる人材の確保です。自動化システムをインテグレーション・保守するには、大規模なITチームが必要です。しかし、多くの従来型工場では予算が限られ、ITチームも非常に小規模です。そのため、MESやその他の重要なITインフラの維持に加えて、自動化システムまで管理することは困難です。

さらに、従来型システムは通常サイロ化されたポイントソリューションで構成されており、完全自動化工場に必要な機能のインテグレーションが不足しています。多くの従来型工場では、自社開発のソリューションと複数のベンダー製商用ソリューションが混在しており、大幅な開発作業を行わない限り、互いに完全にインテグレーションすることはできません。下の図1は、このインテグレーション不足の状況を示しています。完全自動化工場を実現するにはこれらのシステムをインテグレーションする必要があることを、製造業者は理解していますが、そのためには大規模な開発作業が必要であり、小規模なITチームにとっては大きな課題となっています。

Figure 1: Manufacturers struggle to automate data exchange from the enterprise level to the production floor
図1:製造業者は、企業レベルから現場までのデータ交換の自動化に課題を抱えています。

戦略的パートナーシップとすぐに使えるソリューション

従来型製造業者が直面する財務的・物流的な障壁にもかかわらず、より高度に自動化された製造環境への移行を支援するソリューションが登場しています。商業ベンダーは、低コストの「すぐに使える」または事前インテグレーション済み自動化ソリューションを顧客向けに共同開発するため、戦略的パートナーシップを結び始めています。これらのソリューションにより、開発や保守にかかるIT負荷が軽減され、顧客の所有コストを大幅に削減できます。

さらに、ハードウェアやソフトウェアの提供者は、稼働中の工場内の既存システムと共存できるモジュール式ソリューションの提供も開始しています。例えば、特定のMESに依存せず、顧客が独自に開発したものも含め、あらゆるMESで動作する非依存型ソリューションがあります。

ロボティクス

モバイルロボット(ARV、AGV、コボットなど)の進化により、従来型工場でも施設を大幅に作り替えることなく、固有のニーズに対応できるようになっています。既存の工場には、オーバーヘッドホイスト搬送システム(OHT)などの従来型自動資材搬送システム(AMHS)を追加するには適さないインフラとシステムが既に整っています。OHTを導入するには、特定の天井高が必要であり、工場内にガイドレールシステムを設置・構築するには数年単位の建設工事が必要です。これにより多大なコストがかかるだけでなく、稼働中の工場運用にも支障をきたします。一方、モバイルロボットは工場全体を一度に改造したり導入したりする必要がなく、特定のエリアに順次展開することができます。従来型工場では、狭く天井が低いエリアでも生産に大きな支障をきたさずにモバイルロボットを導入することに成功しています。

製造実行システム(MES)の進歩

製造実行システム(MES)は、製造工程の監視と制御を担う重要なソフトウェアです。多くの工場では、数十年前の商用MESや、10年以上前に開発され、現在の複雑な製造プロセスに対応しきれていない自社製MESが使われています。製造プロセスに新たな要件が加わるたびに、そのギャップを埋めるためMESの周囲にポイントソリューションを構築しますが、これが前述のインテグレーションの問題を引き起こす要因となっています。

一方、近年のMESの進化により、現在の複雑な半導体プロセスにも対応できるようになり、自動化への障壁は着実に下がっています。ローコード/ノーコード開発ツールの普及によって開発効率が向上し、ITリソースへの依存も減少しました。これにより、製造業者は自動化工場におけるインテグレーション作業を支援するツールを活用し、自動化ソフトウェアの保守をより効率的に進められるようになっています。

まとめ

製造業者は自動化の重要性を理解していますが、従来型の工場ではその導入に多くの課題がありました。こうした障壁のため、業界の先進工場に追いつくのは容易ではありませんでした。しかし近年では、コストの低減や技術リソースの拡充によって、こうした課題の解消に大きな進展が見られます。業界としては、半導体分野における自動化をより広く実現できる環境づくりを進めています。

筆者について

Picture of Michael Frenna(ワークフロー自動化および工場分析担当グローバルプロダクトマネージャー)
Michael Frenna(ワークフロー自動化および工場分析担当グローバルプロダクトマネージャー)
現在の役割において、Michaelは世界中の半導体顧客の増大するニーズに応えるため、ワークフロー自動化および工場分析サービスのロードマップ施策を推進しています。現在の役職に就く前、Michaelは半導体業界で産業エンジニアとして専門性を磨き、150mm/200mmフロントエンドファブにおけるデジタルトランスフォーメーションおよびI4.0イニシアティブの推進に貢献しました。Michaelは、テクノロジーへの情熱とイノベーション推進への意欲を持ち、世界中の顧客と協力しながら、製造能力と業務効率の向上に取り組んでいます。
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